私は母国のフィリピンで助産師として働こうと思っていましたが、20歳になる前であれば、家族ビザで来日できることと、母の勧めもあり、日本で働くことを選びました。来日後2年間は、工場で勤務していましたが、その間も母国で学んだ助産師の知識を活用したいと思っていました。日本では助産師として働くことはできませんが、介護職であれば他の仕事よりも医療の知識をいかせるのではと思い、入職を決めました。

　実際の介護現場では、思っていたよりも医療に関する知識を活用する場面は少なかったですが、ご入所者の血圧や体温、顔色の変化などの観察に役立っていると思います。介護についてもより深く学ぼうと介護福祉士試験にも挑戦しました。勉強時間の確保など、思い通りに進まないこともありましたが、家族の協力もあり、令和元年度の試験で合格することができました。これからもスキルアップのために、チャレンジしていきたいと思います。

　フィリピンにいたときには日本語は全く学んでおらず、来日のときに知っている日本語は「ありがとう」だけでした。来日後、工場で勤務していたときも、周囲にフィリピン出身者が多く、日本語はあまり上達しませんでした。そのため、当施設に入職した頃は、職員やご入所者とのコミュニケーションが難しかったですが、自分から分からない言葉は「分からない」とはっきり伝えることで、職員だけでなく、ご入所者からも多くのことを教えていただきました。

　昨年（令和２年）、勤務する介護施設にはじめてフィリピンからの技能実習生が２人来日する予定があり、私が教育を担当することになりました。新型コロナウイルスの影響で入国が延期になっていますが、技能実習生たちがしっかりと学ぶために重要な、私にしかできない役割なので楽しみにしています。工場勤務時代の友人から、両親の介護についての相談を受けることもあり、両親の高齢化などで介護に悩んでいる外国人も少なくないようです。その方たちに介護に関する情報提供をすることができればと考えています。ご入所者だけでなく、その家族や施設、地域に信頼され役に立つ介護職を目指しています。

　介護の仕事は、３Ｋと言われていたり、コミュニケーションが難しかったりと最初は悩むことが多いと思います。誰でも最初は分からないことばかりです。分からないことは、介護職の先輩やご入所者がやさしく教えてくれるので、心配することはありません。まだまだ、高齢社会が続くので、人の役に立ちたいと考えている人は、介護職にチャレンジしてほしいですね。